第4回 「学生時代の課題」


 学生時代、次のような課題を助教授から与えられたことがあります。課題は「木組み」でした。
 神社仏閣などの建造物は、木と木を組み上げて造作された部分がほとんどで、壁に当たる部分までが木で仕上げられているもの、木が朱で塗られ白壁と組み合わされたものなど色々とあります。それらを撮影するのが課題の「木組み」です。

 「木組み」の課題の目的は、前回の水準器のでも触れた、真っ直ぐなものを真っ直ぐに撮影する水平垂直と、とそれらの質感でした。カメラは、35mmもしくは中判、水準器なし、仕上がりは白黒、ピントは言うまでもありません。

 カメラを三脚に取り付け、水平垂直を整えていきます。ここで、カメラを取り付ける前の三脚は、エレベーターを少し伸ばして、それでカメラを上下出来るようにしておきます。そうでないと、もう少し下の部分を入れたかったと思っても水平垂直を整えてから、カメラを下に向けるわけにいきません。上へはエレベーターで上げられますが下へ下げられなければ、もう一度三脚の調整からになってしまいます。そのようなことを防ぐためにあらかじめエレベーターを少し伸ばしておきます。

 カメラの水平垂直を整えるということは、被写体とカメラとの平行を確保することになります。被写体とカメラとの平行を確保すると、カタボケ(片方がボケること)せずに、全体がピントの良好な写真に仕上がります。
 たとえば、カメラの水平垂直が整った状態で撮影して、そこから、カメラをやや右に振り、ピントはそのままの状態で撮影してみてください。すると、整った状態で撮影した写真に比べ、ピントを合わせた位置によって変わりますが、右や左が甘くなっていると思います。それと当然、カメラを右に振っているのですから被写体のそれぞれの左より右が狭くなって歪んでいます。 これでは課題として不可で通りません。

 遠近感のある写真でも水平垂直が基本です。遠近感のある写真ではピントがより問題になります。被写界深度を利用して出来るだけ最小絞りで撮影します。絞りを最小にすると解像度が落ちるようですが、ピントが甘くて質感がない写真より、やや解像度が落ちても質感のある写真のほうが優先だと思います。解像度が極端に落ちるようなレンズであれば、そのレンズは使い物になりません。それと、機械で解像度を測定するわけではなく、全体のピントがしっかりしているかどうかの方が大事です。

 レリーズを使用してシャッターを切り、慎重に撮影していきます。当時は、ミノルタのSRT-101を使用していたのでミラーアップが簡単に出来、カメラぶれの心配もさほどではありませんでした。

 上手く撮影が出来ていてもフィルムの現像を丁寧にやらないと、粒子が荒れたり、コントラストがついたりなかったりと質感が表現できません。フィルム現像もそうですが、勿論プリントも丁寧に、丁寧に。

 「木組み」の課題と、一つ一つ取り組むことも大事ですが、それ以上に撮影からプリントまでの自分自身の取り組み方が大事だったように思っています。そして、この課題に取り組んだことで撮影の基本中の基本が学べたのだと思っています。
 この課題のことは学生時代の思い出として、もう亡くなられた助教授の顔と一緒になってよく思い出します。

 機会があれば皆さんも一度、課題の「木組み」に挑戦してみてください。水準器を使用してカラーでどうぞ。晴れた日か曇りの日か、はたまた薄日の日か天候の選択も大事です。

 第5回は、「カメラぶれ」です。

2001.11.14





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うつろひ